頭の中で考えがぐるぐる回っていて、何にイライラしているのか自分でもよくわからない。そんな夜はないでしょうか。
書く瞑想(ジャーナリング)は、その感情を紙の上に書き出して整理する「放電」と、そのあとに前向きな一歩を短く書く「充電」の2段階でできる方法です。放電だけなら数分、充電まで進めても5分あれば始められます。放電だけでも十分ですが、余裕があれば充電まで進めると、少し前向きな気持ちで終われるかもしれません。
書く瞑想とは——記録ではなく、整理のための方法
日記は多くの場合「今日あったこと」を残すために書きますが、書く瞑想は目的が違います。日記が出来事を残すものだとすれば、こちらは頭にある感情や考えを紙に書いて整理するための方法です。
書く瞑想は大きく2つの段階に分かれます。この記事では、頭にあることを判断せずそのまま書き出す段階を放電、そのあとに前向きな一歩を短く書く段階を充電と呼びます。放電だけで終えても十分です。余裕があるときは、そのあとに充電として次にしたいことを書いてみると、少し前向きな気持ちで終われるかもしれません。放電と充電を続けて行う効果そのものを検証した研究はなく、この組み合わせは記事独自の提案です。
放電
- 今の気分をそのまま書く
- きれいに書こうとしない
- 誰にも見せない前提で書く
充電
- 次にやりたいことを書く
- 2〜3行の短さでよい
- 余裕があるときでよい
放電——感情を、判断せずに書き出す
やり方は単純です。今の気分や頭に浮かんでいることを、誰にも見せないつもりでそのまま紙に書きます。文章として整える必要はなく、殴り書きで構いません。「疲れた」「あの一言にイラッとした」、それだけで十分です。書き出すことで、頭の中だけで抱えていたときより、少し気持ちが軽くなる。そう感じることもあります。
人生で最もつらかった出来事について4日間、1日15分書いた学生は、その後半年間の保健センターへの通院回数が、表面的な話題を書いた対照群の学生のおよそ半分にとどまったという結果があります。心理学者ジェームズ・W・ペネベーカー氏(2018年の論文執筆時点でテキサス大学オースティン校)が報告した研究です※。
ただしこれは、人生で最もつらかった出来事について、まとまった時間をかけて書いた研究の結果です。本記事で勧める「疲れた」「あの一言にイラッとした」程度を数分で書くやり方とは、深さも時間も異なります。5分版はこの研究そのものではなく、まず試しやすくするために短くした方法だと考えてください。書けば必ず劇的に変わるわけではなく、少し役立つこともある、くらいに考えてください。
夜、心配事が頭から離れず眠れないときの書き方は、疲れているのに眠れないとき——悩み事を寝床に持ち込まない方法でも詳しく紹介しています。
充電——前向きな一歩を、短く書く
余裕があれば、放電の続きに、この先やってみたいことを2〜3行だけ書きます。壮大な目標である必要はなく、「明日は少し早く昼休みを取る」程度の小さな一歩で構いません。
原因や、うまくいかなかった点を掘り下げるより、次にどうしたいかを短く書いてみます。これが充電の狙いです。
実際に、4日間・1日20分の課題の中で、「努力が実り、人生の目標をすべて達成した未来の自分」について書く回があった学生は、無かった学生と比べて、3週間後の主観的な幸福感が高かったという研究があります。心理学者ローラ・A・キング氏(研究実施時はサザン・メソジスト大学、論文掲載時はミズーリ大学)による研究です(対象は大学生でした)※。
ただしこれも、人生全体を見渡す大きな将来像について、まとまった時間をかけて書く課題を含む研究であり、本記事で勧める「明日は少し早く昼休みを取る」程度の小さな一歩とは、扱う規模が異なります。この記事では、次にしたいことも短く書いてみることを提案しています。
ここで書くのは、明日の昼休みの取り方のような小さな次の一歩であり、書いたとおりに必ずやる約束ではありません。気持ちを少し切り替えるために書きます。
翌日にできなくても構いません。予定や体調が変わり、書いたとおりにできない日もあります。そんな日は、次の日に回してかまいません。書いたこと自体を忘れてしまってもかまいません。目的は、書いたとおりにできたかどうかではありません。つらかったことだけでなく、この先にしたいことも考えてみること自体が目的です。
5分からの、具体的なやり方
紙とペンを用意します。スマートフォンのメモでも構いませんが、通知が気になるなら紙を選べます。新しいノートを買う必要はなく、手元のメモ用紙で十分です。
タイマーを3分に設定し、頭にあることをそのまま書きます。書き終えたら、余裕があれば残り2分で次にやってみたいことを短く書きます。
何を書けばいいか思い浮かばないときは、「今日、一番疲れたのはいつか」のような一つの質問から書き始めれば十分です。
朝起きたあとや寝る前など、毎日の決まった時間を、書く時間に選ぶ方法もあります。書いたものは見返す必要がありません。紙なら捨てても、しまっておいても、スマートフォンなら消してしまっても構いません。目的は書いたものを残すことではなく、書くことで頭の中を少し軽くすることです。慣れてきたら時間を延ばして週末にじっくり書く、といった広げ方もできます。
書いていて感情が強く揺さぶられて収まらないとき
放電の途中で涙が止まらなくなったり、動揺が収まらなくなったりすることもあります。そのときは無理に書き続けず、いったんペンを置いてください。一人で抱え込む必要はなく、職場の相談窓口に連絡する、産業医に相談する、心療内科を受診するなど、話す相手を選ぶこともできます。
※ 出典: ジェームズ・W・ペネベーカー(テキサス大学オースティン校)「Expressive Writing in Psychological Science」Perspectives on Psychological Science, 2018(初出実験はPennebaker & Beall, 1986)/ローラ・A・キング(ミズーリ大学)「The Health Benefits of Writing About Life Goals」Personality and Social Psychology Bulletin, 2001
※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。