Briefing Note

GW明けに部下から「会社に行きたくない」と言われたら──管理職の初期対応3ステップ

GW明けに部下から「会社に行きたくない」と言われた管理職向けブリーフィングノート。傾聴・状況把握・つなぎ先の判断の3ステップ、NG対応、安全配慮義務、産業医・EAPへの橋渡しをデータと専門分析で解説。

エグゼクティブサマリー

GW明けに部下が「会社に行きたくない」と発言した場合、管理職に求められるのは診断でも解決でもなく、傾聴→状況把握→つなぎ先の判断の3ステップによる初期対応である。令和6年「労働安全衛生調査」によれば、強いストレスを感じている労働者は68.3%に上り、メンタルヘルス不調による休業・退職者がいた事業所は12.8%に達する(厚生労働省, 2024)。管理職が初期対応を誤れば安全配慮義務違反のリスクが生じ、適切に対応すれば早期回復と離職防止につながる。本文書は、公的データ・制度・産業カウンセラーとしての専門分析を統合し、管理職が「言われた瞬間」に取るべき行動を体系化する。


定義と現状認識

定義: ラインによるケアとは、労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行うことである(厚生労働省, 2015)。GW明けの初期対応は、このラインケアの中核的実践に位置づけられる。

4つのメンタルヘルスケアにおける管理職の位置づけ

厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、メンタルヘルスケアを4つの体系に整理し、これらが継続的かつ計画的に行われることが重要であるとしている(厚生労働省, 2015)。

ケアの種類 実施主体 内容
セルフケア 労働者本人 ストレスへの気づき・対処
**ラインによるケア** **管理監督者** **職場環境改善・相談対応**
事業場内産業保健スタッフ等によるケア 産業医・保健師等 専門的支援・教育研修
事業場外資源によるケア 外部機関(EAP等) 外部専門家による支援

管理監督者が担う「ラインによるケア」は、部下の異変に最も早く気づき得る立場からのケアであり、4つのケアの中で早期発見の最前線に位置する。ラインによるケアで大切なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下に早く気づくことである(こころの耳)。

なお、心の健康問題は客観的な測定方法が十分確立しておらず、発生過程には個人差が大きく、そのプロセスの把握が難しいという特性がある。すべての労働者が心の問題を抱える可能性がある(厚生労働省, 2015)。

「いつもと違う」のチェックリスト

以下の変化が見られた場合、メンタルヘルス不調の可能性がある(厚生労働省)。

  • それまで遅刻をしたことがない人が遅刻を繰り返す
  • 無断欠勤が出現する
  • 報連相の頻度が落ちている
  • 表情が暗い、口数が減った
  • 昼食をとらなくなった
  • ミスが増えている

日頃から部下に関心を持って接し、「いつもの行動様式」や人間関係の持ち方を知っておくことが、変化に気づく前提条件である(厚生労働省)。


データとエビデンス

メンタルヘルス不調の規模

指標 数値 出典
強いストレスを感じている労働者の割合 68.3% (厚生労働省, 2024)
ストレス内容「仕事の量」 43.2%(最多) (厚生労働省, 2024)
ストレス内容「仕事の失敗、責任の発生等」 36.2% (厚生労働省, 2024)
ストレス内容「仕事の質」 26.4% (厚生労働省, 2024)
ストレス内容「対人関係(セクハラ・パワハラ含む)」 26.1% (厚生労働省, 2024)
ストレス内容「役割・地位の変化等(昇進・配置転換等)」 19.8% (厚生労働省, 2024)
メンタルヘルス不調による休業・退職者がいた事業所割合 12.8% (厚生労働省, 2024)
うち連続1か月以上休業した労働者がいた事業所 10.2% (厚生労働省, 2024)
うち退職した労働者がいた事業所 6.2% (厚生労働省, 2024)
1,000人以上事業所で休業・退職者がいた割合 91.6% (厚生労働省, 2024)

年齢別ストレスの分布

年齢層 強いストレスを感じている割合
20歳未満 28.7%
20-29歳 64.9%
**30-39歳** **73.3%(最高)**
**40-49歳** **73.0%**
50-59歳 69.4%
60歳以上 53.2%

(厚生労働省, 2024)

相談行動の実態

指標 数値 出典
ストレスを相談できる人がいる労働者 94.6% (厚生労働省, 2024)
実際に相談した労働者 74.7% (厚生労働省, 2024)
相談先「家族・友人」(相談可能) 68.6% (厚生労働省, 2024)
相談先「上司」(相談可能) 65.7% (厚生労働省, 2024)
実際の相談先「家族・友人」 62.1%(最多) (厚生労働省, 2024)
実際の相談先「上司」 58.9% (厚生労働省, 2024)

相談行動の男女差

指標 男性 女性
相談可能な相手として最多 上司(70.6%) 家族・友人(71.1%)
実際の相談先として最多 上司(62.5%) 同僚(63.2%)

(厚生労働省, 2024)

メンタルヘルス対策の実施状況

事業所規模 メンタルヘルス対策実施率 ストレスチェック実施率
全体 63.2% 65.3%
50人以上 94.3% 89.8%
30-49人 69.1% 57.8%
10-29人 55.3% 58.1%

ストレスチェックの集団分析実施率は75.4%、うち分析結果を活用した事業所は76.8%である(厚生労働省, 2024)。

傾聴の効果に関するエビデンス

効果 メカニズム 出典
信頼関係の形成 不安・緊張の低減→安心感→「話を聞いてもらえた・尊重された」という充足感→上司への信頼 (こころの耳)
気持ちの鎮静化(カタルシス) 傾聴されることで気持ちが落ち着き、「スッキリした」「胸のつかえが取れた」と感じる (こころの耳)
自己理解と気づき 上司の傾聴と応答に支えられ思考が整理→自己理解→意思決定につながる (こころの耳)

法的根拠

法令等 条文 内容
労働契約法第5条 安全配慮義務 労働者の生命・身体等の安全確保のための必要な配慮(使用者の義務)
労働安全衛生法第26条 自己保健義務 労働者の健康異常申告・健康管理措置への協力義務
労働安全衛生法第69条第1項 健康保持増進措置 事業者は心身の健康保持増進のための措置を継続的かつ計画的に講ずる
労働安全衛生法第70条の2第1項 指針公表 厚生労働大臣は健康保持増進のための指針を公表
安衛則第22条 衛生委員会付議事項 精神的健康の保持増進のための対策の樹立を規定

(厚生労働省, 2015; こころの耳)


分析と含意(Analysis & Implications)

専門キーワード: 心理的安全性、ラインケア、傾聴、積極的傾聴法、カタルシス、認知の歪み、安全配慮義務、自己保健義務、適応障害、プレゼンティズム、情緒的消耗感、痛みへの鈍麻、仕事の要求度-コントロールモデル、努力-報酬不均衡モデル

軸A: メカニズム分析──なぜ管理職の初期対応は失敗するのか

「善意のNG」が生まれる心理的構造

管理職がNG対応(隠す・励ます・自分を責める)に陥るのは、能力の問題ではなく認知優先度の構造に起因する。

管理監督者の多くは、「こうあるべき」という社会的規範と「管理職としてケアを完遂しなければならない」という職務完遂への強い意志を優先し、自身の不安や動揺を後回しにする。この優先構造のもとでは、部下の相談に対して「早く解決しなければ」という衝動が先行し、傾聴より先にアドバイスや励ましが出てしまう。

「大丈夫だよ、疲れてるだけだろう」という言葉は、相手を軽んじているのではない。管理職自身が不安に耐えきれず、「大丈夫であってほしい」という願望が言語化されたものである。部下の「辛い」を受け止めることは、管理職にとって自身の無力感と直面することを意味する。その回避行動として、励ましが発動する。

部下は「こんなことを相談してどう思われるだろうか」と不安を抱えながらも勇気を出して相談している(こころの耳)。不適切な対応は、次に相談しようという気持ちをそいでしまう。善意の一言が部下の口を閉ざす──この構造を理解することが、NG対応を防ぐ第一歩である。

傾聴が機能するメカニズム

傾聴とは「この人は今どんな気持ちでこの話をしているのだろう」ということに関心を持ちながら積極的な姿勢で話を聴くことである(こころの耳)。「聴く」は注意深く集中して聴く能動的行為であり、受身的に「聞く」ことや問いただす「訊く」こととは本質的に異なる(こころの耳)。

重要な知見は、話し始める段階では部下本人も「何が問題なのか、今後何をどのようにしていきたいのか十分整理がついていない」状態であるという点である(こころの耳)。上司の傾聴と応答に支えられて初めて自己理解に至り、意思決定につながる。

つまり、管理職が「何も解決できない」と感じている時間こそ、部下の自己整理が進んでいる時間である。沈黙を恐れて口を挟むことは、この整理プロセスを中断する行為に等しい。

ここで一つ付言する。傾聴は「技術」として語られることが多いが、技法にばかり意識が向いた形だけの機械的な傾聴は、共感や温かさを欠き、ネガティブに作用することもある(こころの耳)。完璧な傾聴技術を身につけることが目標ではない。先入観を持たずに「本気で聴く」こと、話の途中で原因を追及したり内容を評価・否定したりせず、わからないことは教えてもらう姿勢で臨むこと(こころの耳)。それが傾聴の本質である。

「部下にとって、上司は最大の職場環境である」(こころの耳)。傾聴の姿勢を意識するだけで、部下はこれまで以上に安心して思い切った仕事ができるようになる。

GW明け特有の心理的メカニズム

GW明けの不調には、休息による覚醒と適応コストの再発生という二重のメカニズムが働いている。

長期休暇中に心身が「通常モード」に戻ることで、それまで鈍麻していたストレス反応が再覚醒する。同時に、職場環境への再適応コストが発生する。この二重の負荷は、連休前から蓄積していたストレスの表面化を加速させる。

職場のストレスは「仕事の要求度-コントロールモデル」(要求度とコントロールのバランス)と「努力-報酬不均衡モデル」(努力に比して報酬が少ないとストレスフル)の2つの理論で説明される(厚生労働省)。GW前に蓄積されたこれらの不均衡が、休暇による認知の再覚醒によって一気に自覚される。

「五月病」という名称は、この現象を「一過性の気分の問題」として矮小化するリスクがある。症状が2週間以上継続し、好きなことを楽しめなくなり、日常生活に支障が出ている場合は、適応障害として医学的評価が必要な段階にある。ただし、この判断は管理監督者にはできない。それは産業医をはじめとする医師の仕事である(厚生労働省)。

軸B: 制度・環境分析──管理職の法的位置づけと制度的支援

安全配慮義務の実質的担い手

労働契約法第5条が定める安全配慮義務は使用者に課された義務であるが、実質的には管理監督者に委ねられている(こころの耳)。管理監督者は、部下の業務に支障が出ている状態を把握した場合、それに応じた対応を取ることが求められる。

判断基準は**「業務に支障を来しているかどうか」**である。健康上の問題があっても業務に支障がなければ個人の問題であるが、支障が出ていれば管理監督者が介入する根拠となる(こころの耳)。一方、労働者にも自己保健義務(労働安全衛生法第26条)があり、健康異常の申告や健康管理措置への協力は労働者の義務とされている。

厚生労働省の指針は、管理監督者への教育研修に含めるべき項目として、労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)、休業者の職場復帰支援の方法、事業場内産業保健スタッフ等との連携方法などを挙げている(厚生労働省, 2015)。事業者は管理監督者に「部下の話を聴く技術を習得する機会」を与える責務がある(厚生労働省)。

50人未満事業所の制度的空白

メンタルヘルス対策の実施率は事業所規模と強く相関する。50人以上事業所では94.3%が対策を実施しているのに対し、10-29人事業所では55.3%にとどまる(厚生労働省, 2024)。ストレスチェックの実施率も50人以上で89.8%に対し、30-49人では57.8%である。

50人未満の事業所では産業医の選任義務がなく、管理監督者が事実上の「ラインケアの唯一の担い手」となる場面が多い。厚生労働省の指針は、小規模事業場では衛生推進者・安全衛生推進者をメンタルヘルス推進担当者に選任し、地域産業保健センター等の外部資源を活用することを推奨している(厚生労働省, 2015)。

ここに構造的な問題がある。対策が最も不十分な事業所ほど、管理職一人にかかる負荷が大きい。産業医も保健師もいない職場で、管理職が独力で傾聴→状況把握→つなぎ先判断を行わなければならない。この構造を認識せずに「管理職の対応力向上」だけを求めるのは、問題の本質を見誤っている。

個人情報保護と情報共有のジレンマ

管理監督者が部下の健康情報を扱う際、個人情報保護と安全配慮義務の間にジレンマが生じる。部下から聞いた話は大切な個人情報であり、本人の同意なく他に漏らすことは信頼関係を壊すことにつながる(こころの耳)。

一方、安全配慮義務の履行には産業医等との情報共有が不可欠な場面がある。この場合、管理監督者は本人に情報共有の目的と範囲を説明し、了解を得た上で最小限の情報を共有するプロセスを踏む。産業医等は、診断名・検査値・具体的愁訴等の加工前情報を事業者に提供してはならず、最小限に集約・整理・解釈して提供する義務がある(厚生労働省, 2015)。

実務では、以下の事例が参考になる。業務中にぼーっとしている部下について上司が産業医に相談したケースでは、産業医は本人の了解なしには情報を伝えず、まず本人と面談して上司への情報共有の了解を得た上で、業務分担の見直しにつなげた(こころの耳)。同意なき情報共有はメンタルヘルスケアへの参加を阻害し、手続きを踏むことで適切な介入が可能になった好例である。

軸C: 影響分析──初期対応の成否が及ぼす影響

組織へのインパクト

1,000人以上の事業所では91.6%がメンタルヘルス不調による休業・退職者を抱えている(厚生労働省, 2024)。これは大企業においてはもはや「例外的事象」ではなく「日常的な経営課題」であることを示す。

強いストレスを感じている労働者の年齢分布は30-39歳(73.3%)と40-49歳(73.0%)が最も高く、まさに管理職およびその直下の中堅層に集中している(厚生労働省, 2024)。管理職自身がストレスの当事者でありながら部下のケアを担うという二重の負荷が構造的に存在する。

さらに注意すべきは、メンタルヘルスの問題は人事労務管理と密接に関係しており、職場配置・人事異動・職場組織等と連携しなければ適切に進まない場合が多いという点である(厚生労働省, 2015)。加えて、職場外のストレス要因や個人の要因が複雑に相互影響する(厚生労働省, 2015)。初期対応で「原因は仕事だけ」と決めつけることは判断の誤りを招く。

相談行動のギャップ

「ストレスを相談できる人がいる」労働者は94.6%であるのに対し、「実際に相談した」のは74.7%にとどまる(厚生労働省, 2024)。約20ポイントのギャップが存在し、相談先があっても相談に至らない層が一定数いる。

さらに注目すべきは男女差である。男性は「上司」を最も多く相談先として挙げる(70.6%)のに対し、女性は「家族・友人」が最多(71.1%)で、実際の相談先も「同僚」(63.2%)が上司を上回る。管理職が「相談しやすい環境を整えている」と認識していても、女性部下にとっては上司が第一選択にならない可能性がある。この認識のズレは、管理職の「気づけなかった」を構造的に生み出す要因の一つである。

復職と継続的支援

初期対応は入口に過ぎない。休業に至った場合、復職者は「職場では自分はどう思われているのだろうか」「うまく適応できるだろうか」「病気がまた悪くなるのではないか」等の不安を抱えている(厚生労働省)。「上司は自分をわかってくれている」と感じられれば緊張は大幅に軽減され、同じ職場の他の部下の緊張も和らげる効果がある(厚生労働省)。初期対応で築いた信頼関係は、復職支援においてもそのまま機能する。


推奨アクション

フェーズ1: 初期対応(言われた瞬間〜当日中)

1. 環境を整える

安心して話せる「時間」と「場所」を確保する。話の内容が周囲に聞こえない場所(小会議室、空き個室等)を選ぶ。自分の席で聞き始めると内容が漏れ、部下は本音を話せなくなる(こころの耳)。聴く側にも心の余裕が必要であり、自分に余裕がないときは正直に伝え、改めて時間を設定する(こころの耳)。

すぐに時間が取れない場合は「今日の午後、30分だけ時間をもらえますか」と伝え、「後で必ず聴く」という約束をする。

2. 傾聴する(5つのポイント)

ポイント 具体的行動
相談環境を整える 周囲に聞こえない場所、聴く側の心の余裕も確保
非言語的メッセージを意識する 穏やかな表情・視線、落ち着いた姿勢、腕組み・脚組みをしない
うなずき・あいづちを返す 否定・批判を挟まず、自然なテンポで。次の言葉を引き出す
最後まで聴いて理解を確認する 「○○と理解したけれど、合っていますか」と確認。ズレがあれば再度傾聴
誠意をもって対応する 自分で答えが出せないときは素直に伝え、部下が望むなら精通者を紹介

(こころの耳)

3. 状況を把握する(5つの確認項目)

  • いつからそう感じているか(GW前か、GW中か)
  • 何が辛いか(業務量、人間関係、体調、プライベート)
  • 睡眠の変化(不眠、早朝覚醒、疲労感の残存)
  • 食欲の変化
  • 好きなことを楽しめているか

4. 対応内容を記録する

日時、内容、部下の状態を簡潔に記録する。安全配慮義務の観点から重要であり、管理職自身を守る記録でもある。

フェーズ2: つなぎ先の判断と橋渡し

つなぎ先 判断基準
自分で対応 業務量の一時調整、タスク優先順位の見直し、在宅勤務活用で改善が見込める場合
産業医 身体症状あり(不眠・食欲低下・頭痛等)、不調が2週間以上継続、好きなことを楽しめない
EAP(従業員支援プログラム) プライベートの問題が関与、会社に知られたくない悩み
人事部門 ハラスメント関与、異動・配置転換等の制度的対応が必要

つなぎ方の原則は**「選ぶのは本人」**である。「産業医に行きなさい」ではなく「こういう選択肢がある」と伝える。

部下が面談を拒否した場合は、気になっていることを率直に伝え、面談の目的を丁寧に説明する。業務に支障がある場合は、労働者に健康管理措置への協力義務がある旨(労働安全衛生法第26条)を伝えつつ、最小限の情報開示を依頼する。それでも拒否される場合は、管理監督者自身が産業医に状況を相談する方法がある(こころの耳)。管理監督者と産業医をつなぐ仲介者として、保健師・看護師・心理相談担当者・産業カウンセラー・臨床心理士も活用できる(厚生労働省)。

立場別の分岐アクション

立場 初期対応 次の一手
管理職 傾聴→状況把握→つなぎ先判断 翌日以降のさりげないフォロー、経過観察
人事 管理職への研修・サポート体制整備 ラインケア研修の企画、管理職支援の仕組み構築
管理職本人が不調の場合 同僚管理職、人事担当者、社外相談窓口に相談 「相談できる選択肢」を自ら持っておく

相談時のフレーズ例

  • 管理職→部下: 「少し気になっていることがあるんだけど、時間を取って話せますか」
  • 管理職→産業医: 「部下の様子で気になる変化があり、対応について相談させてください」
  • 管理職→人事: 「メンタル面のサポートについて、制度上の選択肢を確認したいのですが」

リソース案内

公的相談窓口

窓口 連絡先 受付時間
働く人の「こころの耳電話相談」(厚生労働省) 0120-565-455 平日17:00〜22:00、土日10:00〜16:00
よりそいホットライン 0120-279-338 24時間対応

管理職向けリソース

  • こころの耳 eラーニング「15分でわかるラインによるケア」: 全6章・約15分の無料学習教材。管理監督者の役割、「いつもと違う」部下への気づき、相談対応、職場組織への対応、職場復帰支援を網羅(こころの耳)
  • 地域産業保健センター: 産業医の選任義務がない50人未満の事業場向けの無料相談窓口

結論

GW明けの「会社に行きたくない」という訴えに対する管理職の初期対応は、傾聴→状況把握→つなぎ先の判断の3ステップに集約される。管理監督者の役割は診断することでも解決することでもなく、「いつもと違う」に気づき、話を聴き、適切な専門家につなぐことである。

特に注視すべきは、30-40代の管理職層自身が最もストレスの高い層であるという事実である(厚生労働省, 2024)。部下を支える人が自らの消耗に気づいていないケースは少なくない。支える側に支えがない構造は、組織として持続不可能である。

管理職が取るべき最初の一手は、明日の朝、いつもと様子が違う部下に「少し時間を取って話せますか」と声をかけることである。


よくある質問(FAQ)

Q1: 部下から「会社に行きたくない」と言われたら、まず何をすればよいか?

安心して話せる場所と時間を確保し、まず話を聴くことが最優先である。アドバイスや解決策の提示は後回しにし、「いつ頃からそう感じていますか」「どんなときに辛いですか」といった問いかけで状況を把握する。管理監督者の役割は診断ではなく、傾聴と適切な専門家への橋渡しである(厚生労働省; こころの耳)。

Q2: 五月病と適応障害はどう違うのか?

「五月病」は医学的診断名ではなく、GW明けに見られる一過性の不調を指す通称である。症状が2週間以上継続し、好きなことを楽しめなくなり、日常生活に支障が出ている場合は、適応障害として医学的評価が必要な段階にある。ただし、この判断は管理監督者にはできない。産業医等の医師の仕事である(厚生労働省)。

Q3: 管理職として安全配慮義務を果たすには何をすればよいか?

労働契約法第5条に基づく安全配慮義務の実質的な担い手は管理監督者である。具体的には、部下の変化に気づく(日常の行動様式を把握する)、話を聴く、対応内容を記録する、必要に応じて産業医・人事につなぐ、の4点が基本となる。業務に支障が出ている状態を把握しながら放置することは、安全配慮義務違反のリスクとなる(こころの耳)。

Q4: 部下が産業医への面談を拒否した場合はどうすればよいか?

まず、気になっていることを率直に伝え、面談の目的を丁寧に説明する。業務遂行に支障がある場合、労働者には健康管理措置への協力義務(労働安全衛生法第26条)がある旨を伝えつつ、最小限の情報開示を依頼する。それでも拒否される場合は、管理監督者自身が産業医に状況を相談するという方法がある(こころの耳)。

Q5: 管理職自身がGW明けに辛いと感じている場合はどうすればよいか?

管理職も例外ではない。令和6年調査では30-40代が最もストレスの高い層であり(73.0-73.3%)、部下のケアと自身の業務の二重の負荷を抱えている(厚生労働省, 2024)。同僚の管理職、人事担当者、社外の相談窓口(こころの耳電話相談: 0120-565-455)を「選択肢として持っておく」ことが重要である。支える側にも支えは必要である。


出典・参考文献

公的機関資料

  1. 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日公示第3号、平成27年11月30日改正公示第6号) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K151130K0020.pdf
  2. 厚生労働省「令和6年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」(2024年) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
  3. こころの耳(厚生労働省)「部下の話を聴けていますか -傾聴のすすめ-」 https://kokoro.mhlw.go.jp/linecare_listen/
  4. こころの耳(厚生労働省)「傾聴のポイント」 https://kokoro.mhlw.go.jp/linecare_listen/ls003/
  5. こころの耳(厚生労働省)「傾聴の基本的態度」 https://kokoro.mhlw.go.jp/linecare_listen/ls001/
  6. こころの耳(厚生労働省)「傾聴の効果」 https://kokoro.mhlw.go.jp/linecare_listen/ls002/
  7. 厚生労働省「ラインによるケアとしての取組み内容」(出典: 中央労働災害防止協会「事業場内メンタルヘルス推進担当者テキスト」, 2010年) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153867.pdf
  8. こころの耳(厚生労働省)「eラーニングで学ぶ『15分でわかるラインによるケア』」 https://kokoro.mhlw.go.jp/e-learning/linecare/
  9. こころの耳(厚生労働省)「管理職が知っておくべき個人情報保護と安全配慮義務とは?」(出典: 日本産業精神保健学会「職場のメンタルヘルスQ&A」産業精神保健Vol.22特別号, 2014年) https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-qa/mh-pro-qa014/

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執筆者プロフィール

江原和比己(えはら かずひこ)

産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会)。かずな総合研究所代表。約25年の会社員生活(エンジニア)を経て独立。20代に月200時間超の残業を経験し、自身が「痛みに鈍麻していた」当事者でもある。その経験をもとに、SFBT(解決志向ブリーフセラピー)を基盤としたブリーフコーチングにより、働く人の心身の回復を支援する。メンタルヘルス企業取締役。

本文書は一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療に関する助言に代わるものではありません。症状が深刻な場合は、医療機関への受診をお勧めします。記載されたデータは各出典の公開時点のものであり、最新の情報については各機関の公式サイトをご確認ください。