リセット・ワーク

仕事の中で意識的に立ち止まり、心身を整える

仕事の中で「止まる勇気」を実践する


概要

仕事の中で意識的に立ち止まり、心身を整える。それがリセット・ワークです。

「止まったらキャリアが終わる」「休んだら置いていかれる」という恐怖で無理を続けている人は多いと思います。でも、止まらずに進み続けると、心も身体も壊れます。

仕事の中でこそ、「止まる勇気」が必要です。


背景

「仕事では止まれない」という思い込み

ランニングなら、「5分歩いて回復する」という発想は受け入れやすい。でも仕事となると、「止まること=悪いこと」「休むこと=怠けている」と感じてしまう人が多いのではないでしょうか。

リセット・メソッドの経営理念は「止まってもいい。何度でも歩き出せば、その一歩が未来を変える。」です。これは走ることだけでなく、仕事にも当てはまります。

原体験

私自身、20代のころ、月200時間の残業を6か月連続で経験しました。単月では250時間に達した月もあり、何度も職場で朝を迎え、丸椅子を並べて仮眠しました。

でも、当時は「辛くなかった」のです。プログラミングが好きだったし、一人で没入する時間は苦ではありませんでした。

本当に辛かったのは、30代後半〜40代前半。一人で没入できる仕事から、「調整事、根回し、駆け引き」という仕事に変わったとき。内向型の自分には、この時期が最も消耗しました。

カウンセラーから「あなたは痛みに鈍麻していますね」と言われました。無理をし続けて、自分が身体を痛めていることに気づけなかったのです。


「止まれない」の正体

恐怖

多くの人が「止まれない」のは、恐怖があるからです。

  • 「止まったらキャリアが終わる」
  • 「休んだら置いていかれる」
  • 「成果を出し続けなければ価値がない」
  • 「周りに迷惑をかけてしまう」

この恐怖は、ある意味で正常な反応です。責任感があるからこそ、止まることを恐れる。でも、その恐怖に支配されて無理を続けると、本当に「終わる」ことになりかねません。

痛みへの鈍麻

もう一つの問題は、「自分が消耗していることに気づけない」ことです。

頑張ってしまう人、自分を許せない人、サボることができない人は、痛みに鈍麻している傾向があります。身体が悲鳴を上げていても、「大したことない」「まだやれる」と思ってしまう。

私もそうでした。骨折しても「痛いと思わなければいい」と我慢し、10年以上経ってからレントゲンで骨折の痕跡を発見したこともあります。

「壊れてから気づく」のでは遅いのです。

充電と放電

仕事には「充電になる仕事」と「放電になる仕事」があります。

種類特徴
充電一人で没入できる、好きなことプログラミング、執筆、分析
放電他者との調整、気を遣う会議、交渉、根回し

同じ「8時間労働」でも、充電8時間と放電8時間では、消耗度がまったく違います。

**大切なのは「労働時間」ではなく「何に時間を使っているか」**です。


リセット・ワーク3原則

  1. 止まることを許可する ― 休むことは怠けではない。機能維持のための必須行為
  2. 身体の声を聴く ― 「まだやれる」より「少し疲れてきた」を優先する
  3. 小さく、頻繁に ― 大きな休みより、小さな休みを何度も

実践形態

リセット・ワークは、時間軸に応じて3つの形態があります。

日次リセット(マイクロ・リセット)

1日の中で、意識的に「止まる」時間を設ける。

パターンサイクル内容
短め25分作業 + 5分休憩こまめに切り替えたいとき
基本50分作業 + 10分休憩多くの作業に対応
集中型90分作業 + 15分休憩深い集中が必要な作業

ポイント

  • タイマーを設定して「強制的に」止まる
  • 休憩中は画面から目を離す
  • 可能なら立ち上がる、歩く
  • 水を飲む、深呼吸する

週次リセット(ウィークリー・リセット)

1週間の中で、まとまった「止まる」時間を設ける。

項目内容
週1回の振り返り15〜30分、今週を振り返る時間
週末の完全オフ仕事のことを考えない日を作る
週初めの準備今週の「止まるポイント」を事前に設定

振り返りの問い

  • 今週、何に一番時間を使った?(充電?放電?)
  • 今週、身体の声を無視した瞬間はあった?
  • 来週、意識的に止まりたいポイントは?

月次リセット(マンスリー・リセット)

1か月の中で、より大きな視点で振り返る。

項目内容
月1回の振り返り1時間程度、今月全体を振り返る
消耗度チェック「最近、疲れやすくなっていないか?」
次月の設計充電と放電のバランスを見直す

シーン別実践例

会議中のリセット

会議は「放電」になりやすい時間です。

実践のヒント

  • 長い会議の前に、5分の準備時間を取る
  • 会議中、意識的に深呼吸する瞬間を作る
  • 発言しないときは、一度肩の力を抜く
  • 会議後、5分だけ一人になる時間を確保する

作業中のリセット

集中作業は「充電」になる人もいれば、「放電」になる人もいます。

実践のヒント

  • 「あと少し」で止める(キリの良いところまでやらない)
  • 立ち上がって窓の外を見る
  • 簡単なストレッチをする
  • 水を取りに行く(強制的に立つ)

プロジェクトのリセット

長期プロジェクトでは、「止まる」タイミングを見失いがちです。

実践のヒント

  • マイルストーンごとに「振り返りの時間」を設定
  • 「追い込み期間」の前に、意図的に休む日を入れる
  • 終わった後、すぐ次に行かず「味わう」時間を取る

「止まる」ことへの罪悪感

罪悪感の正体

「休んでいる自分」に罪悪感を感じるのは、あなたが責任感のある人だからです。それ自体は悪いことではありません。

でも、その罪悪感に支配されて止まれなくなると、いずれ本当に止まらざるを得なくなります。

許可を与える

リセット・ワークは、自分に「止まっていい」と許可を与えることから始まります。

  • 「休むことは、機能を維持するための必須行為」
  • 「止まれる人は、長く走り続けられる」
  • 「短い休みを何度も取る方が、長い休みを1回取るより効率的」

「止まる」ことへの抵抗感

止まることに抵抗を感じるのは、こんな気持ちがあるからかもしれません。

  • 「弱いと思われたくない」
  • 「自分を許せない」
  • 「ここで止まったら負けだ」
  • 「周りに迷惑をかけてしまう」

これらは、責任感のある人ほど感じやすい気持ちです。

意図的なリセット

リセット・ワークは「意図を持って止まる」ことです。

  • 何となく休むのではなく、「回復のために止まる」と決めて止まる
  • 自分を責めるのではなく、「機能を維持するための行為」と捉える
  • 弱さではなく、「長く走り続けるための知恵」と理解する

止まることを自分に許可できたとき、また歩き出す力が生まれます。


過剰適応のサイン

以下のサインに気づいたら、「止まる」ことを検討してみてください。

身体のサイン

  • 朝起きても疲れが取れていない
  • 頭痛、肩こりが慢性化している
  • 食欲の変化(急に増えた、減った)
  • 睡眠の質が落ちている
  • 風邪をひきやすくなった

心のサイン

  • 些細なことでイライラする
  • 何をしても楽しくない
  • 集中力が続かない
  • 「もう無理」と感じる瞬間がある
  • 休日も仕事のことが頭から離れない

行動のサイン

  • 休憩を取らずに作業し続けている
  • 「あと少し」が口癖になっている
  • 「大丈夫」と言いながら無理している
  • 周囲から「大丈夫?」と聞かれることが増えた
  • 自分のケアを後回しにしている

大切なのは「壊れる前に気づく」ことです。


仕事とリセット・メソッドの統合

通勤をリセット・デイリーに

通勤時間は、リセット・デイリーの実践の場です。

  • 一駅手前で降りて歩く
  • イヤホンを外して周りの音を聴く
  • いつもと違う道を通ってみる

詳細: リセット・デイリー

昼休みをリセット・ウォークに

昼休みの15分だけでも、外を歩いてみる。

  • デスクから離れる
  • 空を見上げる
  • 季節の変化を探す

詳細: リセット・ウォーク

休日を旅ランに

休日に、いつもと違う場所を走ってみる。

  • 仕事のことを忘れる時間
  • 身体を動かすことで頭をリセット
  • 縁を紡ぎながら物語を作る

詳細: 旅ラン


産業カウンセラーとして

私は産業カウンセラーとして、働く人のセルフケアに関わる活動をしています。

多くの「頑張る人」と向き合ってきました。彼らに共通しているのは、「止まることへの恐怖」と「痛みへの鈍麻」です。

止まっても大丈夫。また歩き出せばいいのです。

痛みを認めることも強さです。「大丈夫」と言い続けることだけが強さではありません。

もし今、あなたが「止まれない」と感じているなら、それはサインかもしれません。小さな一歩から始めてみてください。


注意事項

リセット・ワークは万能ではない

リセット・ワークは、日常の中での予防的なセルフケアです。

以下の場合は、専門家への相談をお勧めします:

  • 2週間以上、気分の落ち込みが続いている
  • 仕事に行けない、または行くのが著しく困難
  • 自分を傷つけたいという考えが浮かぶ
  • 日常生活に支障が出ている

環境の問題は個人の努力では解決しない

「止まれない」原因が、職場の環境や制度にある場合もあります。

その場合、個人のセルフケアだけでは限界があります。必要に応じて、上司への相談、人事部門への相談、外部の相談窓口の利用、環境を変える選択も検討してください。


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