Briefing Note

産業カウンセラー江原和比己の支援哲学 — 過重労働の当事者経験から生まれたステップ・メソッド

月200時間超の残業、100kmウルトラマラソン完走、大企業からの独立。痛みへの鈍麻を経験した産業カウンセラーが、当事者視点で構築したステップ・メソッドの背景と支援哲学を体系的に整理する。

エグゼクティブサマリー

私、江原和比己は、月200〜250時間の残業を「辛くない」と感じていた過重労働の当事者です。その経験を起点に産業カウンセラー資格を取得し、2018年にかずな総合研究所を設立しました。私の支援の核となるステップ・メソッドは、「止まってもいい。何度でも歩き出せば、その一歩が未来を変える。」という実践哲学であり、森俊夫先生から学んだSFBT(解決志向ブリーフセラピー)を思想的基盤とするブリーフコーチングで展開しています。痛みに鈍麻していた自分自身が「休む力」を再発見した過程そのものが、支援の土台になっていると考えています。


定義と背景

定義: ステップ・メソッドとは、「止まってもいい。何度でも歩き出せば、その一歩が未来を変える。」を心身で実践する方法であり、無理に進み続けず、あえて止まる勇気を持つことで心と体の機能を維持・最適化する実践哲学である(かずな総合研究所, 2026)。

江原和比己の経歴概要

項目 内容
世代 団塊ジュニア(1973年生)
学歴 経営情報学士(働きながら取得)
資格 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会)
所属 日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員
現職 かずな総合研究所 代表(2018年9月〜)
兼職 メンタルヘルス企業 取締役(2025年6月〜)

経験の時系列

時期 出来事
中学生 右掌を痛める。10年以上後、20代で受診した整形外科で骨折と判明
20代 月200時間残業を6か月連続。単月最高250時間。「辛いとは感じなかった」
40代前半 ランニング開始。『マラソン中毒者』との出会いがきっかけ
40代中盤 100kmウルトラマラソン完走。70km付近で赤茶色の尿
2018年9月 かずな総合研究所設立
50代 ランニング再開。15:5サイクルを意識的に設計し、ステップ走法を考案

支援の対象像

かずな総合研究所が想定する読者・クライアントの状態は以下の通りです(かずな総合研究所, 2026)。

  • このペースで続けていけるのか、不安になる
  • 立ち止まりたいけど、止まったら置いていかれる気がする
  • 本当にやりたいことを、後回しにしている気がする
  • 最後にゆっくり考える時間を取ったのは、いつだろう

これらはいずれも「走り続けている人が、走りながら感じている違和感」であり、本人が明確な問題として自覚していない段階を捉えている点が特徴です。


データとエビデンス

本プロジェクトは自己紹介記事の逆生成であり、外部統計データは限定的です。以下は江原本人の実体験に基づくデータと、かずな総合研究所公式サイトから取得した情報を整理したものです。

過重労働の実態データ

項目 数値 備考
月間残業時間(継続) 200時間超 × 6か月連続 本人の経験
月間残業時間(最大) 250時間 本人の経験
主観的苦痛 「辛いとは感じなかった」 痛みへの鈍麻による過小評価

ウルトラマラソンの実績データ

項目 内容
種目 100kmウルトラマラソン
結果 完走
身体的影響 70km付近で赤茶色の尿(身体への深刻な負荷のサイン)
処置 レース中に痛み止めを2回服用
後遺的影響 ゴール後、脚が使用不能。数か月間走行不能

かずな総合研究所のサービス構造(かずな総合研究所, 2026)

区分 対象 内容
個人向け 個人 セミナー・個別サポート。「止まる勇気と歩き出す力を身につける」
法人向け 組織 研修・組織開発。「止まれる組織」をつくる

ステップ・メソッドの構造(かずな総合研究所, 2026)

ステップ・メソッドは「2つの要素」と、その間にある「余白」で構成される。

構成 内容 役割
第1要素「止まってもいい」 立ち止まることは「弱さ」ではなく「選択肢」 強制ではなく、許可の提示
余白 止まっている間に何をするかは本人次第。景色を眺めても、深呼吸しても、何もしなくてもいい 言語化しない。本人のリソースに委ねる
第2要素「何度でも、新しい自分へ」 歩き出すことも止まることも等しく「未来を変える一歩」 現在と未来をつなぐブリッジ

「止まる」は「諦める」ではなく「手段を変える」ことを指す。原点は100kmマラソンのコーチから学んだ言葉:「走ることを止めてもいい。でもゴールに向かうことは止めるな」。走る(手段)を止めても、歩く(別の手段)で前に進める。SFBTの「うまくいかないなら違うことをせよ」と同じ構造である(かずな総合研究所, 2026)。


メカニズム分析 — なぜ「辛くない」が起きるのか

関連キーワード: 痛みへの鈍麻、認知の歪み、SFBT、解決志向、ブリーフコーチング

私の経験で最も注目すべきは、月250時間という極度の過重労働を「辛いとは感じなかった」という主観です。これは根性論ではなく、痛みへの鈍麻という心理的・生理的なメカニズムで説明できると考えています。

幼少期からの鈍麻パターンの形成

私は中学生のときに右掌を痛めましたが、「痛いと思わなければ痛くない」と言い聞かせ、痛みを感じずに過ごしました。結果として指が曲がったまま固まり、20代で整形外科を受診したときに「ボクサー骨折の痕がある」と指摘されて、初めて骨折していたことを知りました。骨折を「いい思い出」として捉えていたこの原体験が、身体のシグナルを意識的に遮断する対処パターンを作る土台になったのだと、今振り返ってそう思います。

このパターンが、20代の過重労働期にそのまま再現されたと考えるのが妥当です。

過重労働における鈍麻の構造

月200時間超の残業を6か月間続けられた背景には、以下の複合要因が推定されます。

要因 メカニズム 私の場合
認知的鈍麻 「これが普通」という基準の内面化 職場環境が基準値を歪めていた
没入による遮断 没頭状態が身体シグナルを抑制 業務の大半がプログラミング(没入しやすい作業)
社会的比較の欠如 周囲も同じ状態のため異常と認識できない 同僚も同様の労働環境にあった
幼少期パターンの再現 痛みを遮断する既知の対処法を適用 骨折の経験で学習済み

ここで見落としてはならないのは、鈍麻している本人にはチェックシートが機能しにくいという点です。「最近、疲れを感じますか?」という設問に対し、鈍麻状態のときの私は正直に「いいえ」と答えていました。それは嘘ではなく、本当に感じていなかったからです。既存のストレスチェックでは捕捉しにくい層が、ここに存在します。

ウルトラマラソンにおける同一パターンの再現

100kmウルトラマラソンでの行動も、過重労働時のパターンと構造的に同じでした。70km地点で赤茶色の尿が出るという深刻な身体シグナルに対し、痛み止めを2回服用して走行を続けました。「完走」という目標が認知の最上位にあり、身体の警告は後回しになっていたのです。

この経験が転機になったのは、鈍麻していた自分が初めて「無理をしすぎた」と自覚したからです。身体が完全に機能停止し、数か月走れなくなるという明確な結果が、認知の修正を促しました。頭で理解するのではなく、身体が教えてくれたのです。

鈍麻の経験者だからこそ言葉にできること

私の支援の特徴は、鈍麻の内側にいた経験者として、その構造を内側から言葉にしている点にあると考えています。「つらいときは休みましょう」という助言は、鈍麻している本人にとっては「つらい」という前提条件が成立せず、届きにくいことがあります。私は「つらくなかった自分」を起点にしているため、鈍麻状態にある方への到達経路が変わってきます。

含意

私の経験が示す最も重要な含意は、「気づきにくい層」が存在するということです。ストレスチェック、相談窓口、セルフケアの啓発――これらの多くは「自分が辛い」と認識している人を対象に設計されています。しかし、痛みに鈍麻していた頃の私のような人間は、その入口にすら立てません。ステップ・メソッドが「止まってもいい」という許可から始まるのは、「止まる必要がある」と自覚していない方に向けた設計です。


推奨アクション

自分を確かめてみる

以下の問いに対し、「はい」が2つ以上ある場合は、自身の状態を過小評価している可能性があります。

  • 周囲から「休んだ方がいい」と言われるが、自分ではそう思わない
  • 趣味や楽しみの時間が、以前と比べて著しく減っている
  • 身体の不調(肩こり、頭痛、睡眠の質低下)を「このくらいは普通」と感じている
  • 最後に「何もしない時間」を過ごしたのがいつか思い出せない

小さな一歩

江原が大切にしている「ノータイムポチリ」は、深く考えすぎずに心の声に従ってまず行動する姿勢です。大きな変化は必要ありません。

  • 朝5分だけ早く起きて散歩する
  • 気になるイベントに参加してみる
  • 「とりあえず話してみたい」という段階で相談する

立場別の分岐アクション

立場 アクション
本人 上記のセルフチェックを実施し、1つでも該当すれば周囲の声に耳を傾ける
管理職 「問題なし」と回答する部下ほど注意深く観察する。鈍麻している人は自己申告に現れにくい
人事 ストレスチェックの結果だけに頼らず、勤怠データ(残業時間の推移、有給取得率)との複合分析を行う

相談時のフレーズ例:

  • 本人: 「最近、周りから心配されることが増えたので、一度話を聞いてもらえませんか」
  • 管理職: 「最近どうですか? 業務量や体調のことを、少し話せる時間をもらえますか」

リソース案内

かずな総合研究所

項目 内容
公式サイト kazunalab.com
個人向け セミナー・個別サポート
法人向け 研修・組織開発
問い合わせ 公式サイトのお問い合わせフォームより。「とりあえず話してみたい」という段階でも対応可能(かずな総合研究所, 2026)

結論

私の支援哲学の独自性は、痛みに鈍麻していた当事者として、その鈍麻の構造を内側から言葉にしている点にあると考えています。「辛いなら休みましょう」ではなく「辛くないと感じている、その状態こそを疑ってみませんか」という問いかけは、「つらい」と認識する手前にいる方へのアプローチを可能にします。

ステップ・メソッドの「止まってもいい」は、止まる必要性を自覚していない方に向けた許可の言葉です。SFBTの「うまくいかないなら違うことをせよ」という実験精神と組み合わせることで、深刻な反省や原因追及ではなく、軽やかな方向転換を促す支援を設計してきました。

最初の一歩としてお勧めするのは、本稿の自己点検項目を確認することです。2つ以上該当する場合は、自分の状態を正確に把握できていない可能性があります。


よくある質問(FAQ)

Q: ステップ・メソッドとは何ですか?

ステップ・メソッドは、「止まってもいい。何度でも歩き出せば、その一歩が未来を変える。」を心身で実践する方法です。ステップ走法(走る)、ステップ・ウォーク(歩く)、ステップ・デイリー(日常生活)、ステップ・ワーク(仕事)の4つの形態で実践できます。SFBT(解決志向ブリーフセラピー)を思想的基盤とし、私自身の過重労働・ウルトラマラソンの経験から体系化しました。

Q: 江原和比己はどのような資格を持っていますか?

産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)を保持しています。日本ブリーフサイコセラピー学会の正会員でもあり、SFBT(解決志向ブリーフセラピー)は森俊夫先生から学びました。約25年の会社員経験(エンジニア)を経て、2018年にかずな総合研究所を設立しました。2025年からはメンタルヘルス企業の取締役も務めています。経営情報学士は働きながら取得しました。

Q: かずな総合研究所は個人でも利用できますか?

利用できます。個人向けにはセミナーと個別サポートを提供しており、「とりあえず話してみたい」という段階からの問い合わせにも対応しています(かずな総合研究所, 2026)。法人向けには研修・組織開発を「止まれる組織」をつくるというコンセプトで提供しています。

Q: 「ノータイムポチリ」とはどういう意味ですか?

深く考えすぎずに心の声に従ってまず行動し、あとから自分に責任や段取りを任せるやり方です。無計画な暴走ではなく、動けなくなる前に一歩を踏み出し、後戻りできない状況を作ることで実行力を高める考え方を指します。元は小野裕史氏(『マラソン中毒者』著者)の言葉であり、私が愛用するフレーズです。


出典・参考文献

一次ソース

  • かずな総合研究所 公式サイト(2026年): https://kazunalab.com/ — サービス概要、ステップ・メソッド定義、想定読者像
  • 江原和比己「自己紹介|歩き出す勇気、未来を変える一歩」note記事: https://note.com/kazunalab/n/n6b4ecdd0f7dc — 著者の経歴・経験についての記事

※ 本稿における過重労働時間、ウルトラマラソンの身体的影響、幼少期の骨折エピソード等は、いずれも著者本人の経験に基づく。


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執筆者プロフィール

江原和比己(えはら かずひこ)

産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所代表/メンタルヘルス企業取締役。約25年の会社員生活(エンジニア)を経て、2018年にかずな総合研究所を設立。月200時間超の残業を「辛くない」と感じていた痛みへの鈍麻の当事者経験と、100kmウルトラマラソン完走で学んだ「無理しない挑戦」の知見を統合し、ステップ・メソッドを体系化。森俊夫先生から学んだSFBT(解決志向ブリーフセラピー)を基盤とするブリーフコーチングで、「走り続けている人」の支援を行う。

本文書は一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療に関する助言に代わるものではありません。症状が深刻な場合は、医療機関への受診をお勧めします。記載されたデータは各出典の公開時点のものであり、最新の情報については各機関の公式サイトをご確認ください。