限界・危機

夫婦関係が壊れかけて、家に居場所がないと感じたとき

毎日同じ家で暮らしているのに、必要な連絡以外の会話がない。そんな状態が続くと、仕事にも響いてきます。理由がわからないまま関係が悪くなっていくのは、努力不足のせいではありません。今すぐ答えを出さなくていい理由と、一人で抱え込まないための一歩を紹介します。

江原 和比己(産業カウンセラー/かずな総合研究所代表)

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この記事の要点

  • 家庭でのストレスが仕事のパフォーマンスや心身の状態とも関連することが、心理学の研究で示されている
  • 関係を続けるか、別れるかを今すぐ決める必要はない
  • 相手からの暴力や支配的な言動があるなら、身の安全が脅かされる状況では110番に、判断に迷う段階でも専門窓口に相談できる
  • 眠れない・食欲がないといった不調のサインが、いつもより強く長く続いているなら、専門家に相談する目安になる

必要な連絡以外、言葉を交わさなくなった。同じ部屋にいても、視線が合わない。それでも生活は続いていて、明日も同じ家で過ごすことになる。そんな毎日が続いているなら、家に帰ることそのものが、気の重いものになっていないでしょうか。

家に居場所がないと感じると、働くことにも響いてくる

理由もわからないまま、関係が冷え込んでいくことがあります。それは、積み重なってきた事情が人それぞれ複雑にあるからで、あなたの努力不足だけが原因とは限りません。

まず知っておきたいのは、家庭でのストレスが仕事にも響いてくるということです。2011年に発表された、複数の調査をまとめた心理学の分析があります。意識が家庭のことに引っ張られたまま働き続ける状態は、仕事のパフォーマンスが落ちやすくなること、強いストレスや燃え尽きたような疲れと関連していました。

家に帰っても気が休まらない状態のまま働き続ければ、集中力が落ちてくることがあります。それは意志の弱さのせいではありません。

できることもあります。仕事中に意識が家庭のことへ引っ張られていると感じたら、一度手を止めて深呼吸をする、休憩時間に少し外の空気を吸う。そうした切り替えを挟むだけでも、集中力の落ち込みを和らげられることがあります。気持ちを無理に抑え込もうとするより、切り替える時間を意図的に作るほうが、長く働き続けるための現実的なやり方になります。

続けるか、別れるかを、今すぐ決めなくてもいい

「このまま続けるべきか、それとも見切りをつけるべきか」——その問いに、すぐ答えを出さなければと感じることがあるかもしれません。ですが、なぜ関係がこうなったのかを深く考えるより、今の自分をどう保つかを先に考えるほうが、実際には助けになります。関係の結論を、今すぐ出す必要はありません。暴力や支配を受けている場合は話が別ですが、そうでなければ、答えを急ぐ必要はないのです。

大きな決断を急がず、まず自分の生活のリズムを保つことに意識を向ける、という選択肢もあります。眠る時間を削らない、食事を抜かない、決まった時間に体を動かす——こうした小さな積み重ねが、後になって効いてきます。

相手からの暴力や支配的な言動があるなら、様子を見ない

相手からの暴力や、行動を細かく監視する・外出や連絡を制限するといった支配的な言動を受けているなら、これは話が別です。「これはDVにあたるのだろうか」と迷う段階でも、内閣府のDV相談プラスは相談を受け付けています。

身の安全が脅かされる状況にあるなら、ためらわず110番に通報してください。そのうえで、DV相談プラスにも相談できます。

相談先 対応時間
110番(緊急時) 24時間
DV相談プラス 電話(0120-279-889) 24時間、男性の相談にも対応。毎週日曜15時〜21時は男性専用回線でも受付
DV相談プラス チャット相談 12時〜22時

一人で抱え込まず、家庭外にも居場所を持つ

まずできることは、家庭の外にいる誰か一人に、少しだけ話してみることです。気持ちの整理がついてから話そうと思っていると、その日はなかなか訪れません。先に一言だけ声に出してしまえば、整理のほうは後からついてくることがあります。話す相手は、古くからの友人でも、職場の同僚でも構いません。

話すこと自体にためらいがあるなら、男性が「助けて」と言えない理由と、それでも相談するにはも参考になります。

眠れない、食欲がない、疲れが取れないといった状態が、いつもより強く出ている、あるいは長く続いていると感じるなら、それは注意が必要なサインです。企業内の産業医や、外部のメンタルヘルス相談窓口に相談することも、自分を保つための一つのやり方です。厚生労働省のこころの耳というサイトでも、相談窓口の探し方を紹介しています。

家庭の中だけに居場所を求めなくてもいいのです。没頭できる趣味を持つ、気心の知れた人と過ごす——家庭の外にも居場所を一つ持っておくことが、関係が冷え込んでいる間の支えになります。

※ 出典: Amstad, F. T., Meier, L. L., Fasel, U., Elfering, A., & Semmer, N. K.「A Meta-Analysis of Work–Family Conflict and Various Outcomes With a Special Emphasis on Cross-Domain Versus Matching-Domain Relations」Journal of Occupational Health Psychology, 16(2), 2011年。内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力の形態」「DV相談プラス」。厚生労働省「こころの耳」。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。

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