同僚が治療が続く病気にかかったと知ったとき、家族ではないあなたはどう接すればいいのか分からず、戸惑うのではないでしょうか。通院や療養で休みがちになったり、以前ほど仕事がはかどらなくなったりと、その同僚が働き続けることが難しくなる時期もあります。ここでは、厚生労働省の両立支援ガイドラインや国立がん研究センターの情報をもとに、同僚としてできることを紹介します。
治療が続く病気にかかったと知ったとき、まず心がけたいこと
国立がん研究センターは、身近な人ががんになったときに心がけたいこととして、がんについて正しく理解すること、患者や家族の価値観を尊重すること、そのうえで接し方を考えることを挙げています。同センターが大切にしているのは、あなたが変わらず、これまでと同じように接することです。
厚生労働省の両立支援ガイドラインも、症状や治療方法は人によって大きく異なるため、個別の事情に応じた配慮が必要だとしています。がんに限らず、同僚がどのような病気であっても、まずは本人の状況に合わせて考える姿勢が土台になります。
同僚が心身ともに余裕のない状態にあるときは、相手から何か言ってくれるのをじっと待つことも必要です。根掘り葉掘り病状を聞き出そうとせず、本人が話したいときに話せる余白を残しておくことも大切です。
良かれと思って病気について熱心に調べ、本人に教えたくなることもあるでしょう。ですが、必ずしも積極的に伝える必要はありません。自分の知識として持っておき、接し方を考える参考にとどめるくらいでちょうどよいのです。
態度や仕事ぶりの変化を、どう理解するか
同僚の病状がどれくらい深刻か、治療で回復が見込めるのか、厳しい状態にあるのか、本人から詳しく聞いていない限り、あなたには分かりません。分からないままでも、態度や仕事ぶりの変化をどう受け止めればいいか、知っておくと助けになる知識があります。
厚生労働省の両立支援ガイドラインは、病気の症状や治療の副作用によって、本人が仕事を進める力が一時的に落ちる場合があると説明しています。治療が終わった後も、後遺症として変化が残ることもあります。中には見た目には分かりにくい変化もあり、例えば脳卒中の後遺症には、記憶力や集中力の低下のように一見して分かりづらいものがあり、周囲の理解や協力を得にくい場合があるとされています。
がんの場合は、告知を受けて強い衝撃を受ける時期に、何をしても無駄だという投げやりな態度が表れることがあると、国立がん研究センターは説明しています。同センターは、こうした反応も多くの人に見られる自然な経過だとしています。同僚の性格や、覚悟が足りないことの表れではありません。
いずれの場合も、この経過がどのくらいの期間で進むかは、病状や本人によって違います。同僚の様子が長く変わらないからといって、急かしたり、心配のあまり強く励ましたりする必要はありません。ただ、様子が変わらないどころか、明らかに深刻さを増しているように見えるときは、同僚が一人で抱え込まないよう、相談を勧めることも考えてください。
相談されたとき、どう聞くか
同僚から相談を受けることもあります。国立がん研究センターは、相手の話に耳を傾け、何が不安なのか、何を迷っているのか、そして何を大切にしたいと思っているのかを聞くことが、悩みを整理し気持ちの負担を軽くすることにつながると説明しています。
必ずしも、アドバイスや情報を求められているわけではありません。答えを急いで出そうとせず、「いつでも話を聞くよ」と伝えられる人でいることのほうが、同僚にとって支えになることがあります。
仕事の面でできること
治療をしながら働き続けるための制度は、時差出勤や時間単位の休暇、テレワークなど、会社によって整えられています。厚生労働省の両立支援ガイドラインが対象とするのは、がんや脳卒中、心疾患、糖尿病など継続した治療が必要な病気です。
こうした制度を使うかどうか、会社にどこまで伝えるかは本人が決めることです。治療と仕事の両立支援は、本人が申し出てから始めるのが原則です。病状や治療の詳細は、会社でさえ本人の同意なく取得してはならない、とても踏み込んだ個人情報です。同僚であるあなたが、人事や産業医に代わって動く必要はありません。
あなたにできることは二つです。こうした制度が会社にあるかどうか、人事に確認できると本人に伝えること。そして、必要以上に気を遣いすぎず、負担をかけないようにすることです。
症状や治療の影響は一時的なこともあれば、治療の結果として障害が残ることもあります。同ガイドラインは、障害が残った場合、期間を区切らず配置や仕事内容の調整が続くこともあり、そのときは人事や上司だけでなく同僚の理解・協力も重要になるとしています。病気が一度落ち着いた後に再発することも想定し、そのつど職場で改めて対応を考えることが大切だとも述べています。
こうした場合も、あなたにできることは変わりません。作業内容の調整をどうするかは、本人と会社が話し合って決めることです。あなたは変わらず、必要な配慮に理解を示す側でいることです。
心配なサインが見えたとき、専門の窓口につなぐ
がんの場合は、全国のがん診療連携拠点病院に設置されているがん相談支援センターや、国立がん研究センターが運営するがん情報サービスサポートセンター(03-6706-7797、平日10時〜15時)に相談できます。これらの窓口は、患者本人だけでなく、身近にがん患者がいる人も利用の対象です。同僚とどう接すればいいか、あなた自身が迷ったときの相談先としても使えます。
がん以外の病気の場合は、これまで紹介した人事や産業医に、あなた自身の疑問として相談してかまいません。
ここまでの「待つ」という姿勢とは別に、一つだけ急いでほしい場面があります。もし、同僚が「消えてしまいたい」というような言葉を漏らすことがあれば、それはあなたが一人で抱え込んでいい重さではありません。
厚生労働省が案内する「#いのちSOS」(0120-061-338、24時間365日、通話料無料)や、あなたのいばしょのチャット相談(24時間365日、無料・匿名。声に出すのが難しいときにも使えます)を、早めに本人に伝えてください。それが、あなたにできる一番の力になります。
あなた自身が心配で誰かに話したいときも、これらの窓口や、人事・産業医を頼ってください。
※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。