体はもう限界だと分かっている。それでも、休むと言い出せないまま今週も出勤した。そう感じているとき、まず思い浮かぶのは上司の顔かもしれません。
ただ、休みを取り残す理由を尋ねた調査で多く挙がるのは、引き継ぎと業務量のほうです。自分で動かせるのは、終業から次の始業までの時間、医師への相談、後ろに回す仕事の3つです。
休みを取り残す理由として多く挙がるのは、引き継ぎと業務量
労働政策研究・研修機構の調査に、働く人15,297人が答えています。このうち「年休を取り残すことがある」と答えた13,047人に、その理由を聞いています。
「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせた割合は、「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」が39.7%、「仕事の量が多すぎて休んでいる余裕がないから」が38.5%です。「上司がいい顔をしないから」は15.3%にとどまります。
同機構は、急な用事や病気の備えを除けば、仕事の量や代わりに仕事をする人、職場の雰囲気といった勤め先の事情で取り残されている、とまとめています。
休みを取るのに上司との調整が要る場面は、もちろんあります。それでも、調整を待つ間にできることがあります。
休暇そのものを申し出るときの気まずさについては、有給休暇を罪悪感なく使うにはにまとめています。
丸1日空けられなくても、終業から次の始業までを数えてみる
休むことを1日単位で考えていると、丸1日空けられない時期には打つ手がなくなります。1日ではなく、終業から次の始業までの時間で見てみてください。
厚生労働省は、この時間を一定以上確保する仕組みを勤務間インターバル制度と呼んでいます。終業時刻から次の始業時刻の間に休息時間を設けることで、生活時間や睡眠時間を確保しようとするものだと説明しています。
同省の導入マニュアルは、制度を設計する企業に向けて、複数の時間数を設定する場合の例として「11時間は望ましい水準、9時間は最低限確保してほしい水準」を挙げています。従業員の通勤や睡眠、生活に必要な時間も考えに入れて決める、という考え方です。
制度が職場になくても、この時間数は自分の目安に使えます。今夜の終業から明日の始業までが9時間を下回りそうなら、今日中に終える必要のない作業がないかを見てみてください。終業を早めた分だけ、次の始業までの時間が延びます。
残業時間の長さと睡眠時間の関係は、「残業しても平気」という感覚が一番危ないで扱っています。
面接指導は、自分から申し出て受けられる
休んでいいと納得しきれていなくても、面接指導を申し出ることはできます。
労働安全衛生法は、時間外労働が一定の時間を超えた人に、医師による面接指導を行うことを会社の義務としています。対象は、1週間当たり40時間を超えた時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる人です。
この面接指導は、本人が会社に申し出て行われます。申し出があったときは、会社は遅らせずに実施しなければなりません。受けるかどうかを決めるのは自分です。
申し出たあとに何が起きるかも、同じ法律に書かれています。会社は面接指導の結果にもとづいて医師の意見を聴き、必要があると認めるときは、労働時間を短くする、担当する作業を変える、深夜の勤務を減らすといった対応を取らなければなりません。休ませてほしいと自分だけで交渉するのではなく、会社が医師の意見を聴いたうえで判断します。
この要件に当てはまらない場合も、いま体に起きていることをかかりつけの医師に伝えておけば、休むかどうかを一人で抱えなくて済みます。
後ろに回す候補は、自分で決めてから伝える
「もう回りません」とだけ伝えると、どれを遅らせてよいかを判断する材料が相手にないので、話が前に進まないことがあります。
今週の締切と、それぞれにかかる時間を書き出してみてください。どれにどれだけかかるかを並べられるのは自分です。そのうえで後ろに回す候補を決めて、「AとBは今週中に出します。Cは来週に回してよいでしょうか」と伝えます。
自分で決めるのは候補までです。どれを遅らせるかを最終的に決めるのは、他部署や取引先との約束まで見えている上司です。
「全部やってくれ」と返ってくることもあります。その場合、仕事の量は変わりません。それでも、締切とかかる時間を示したやりとりは、メールやチャットに残しておいてください。次に相談するときに、同じ説明から始めなくて済みます。
引き受けた仕事を人に渡すときの考え方は、真面目・責任感が強い人が無理をしてしまう理由にまとめています。
すでに体に出ているなら、休むかどうかを一人で決めない
眠れない、食べられない、朝起きられない。こうした変化が続いているなら、休むかどうかの判断より先に、相談してください。
国立精神・神経医療研究センターは、こころと体の不調が続くときには早めに専門家に相談するようにしましょう、と勧めています。
話せる相手が職場にいないときは、厚生労働省の「こころの耳」に相談できます。電話・SNS・メールの3つの方法があり、受付時間や利用のしかたは同サイトの働く人の「こころの耳電話相談」(外部サイト・新しいタブで開きます)で確認してください。
限界を超えていると自分で分かっているなら、その感覚を信じてください。あとは、それを一人で抱えないことです。
※ 出典: 労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」(調査シリーズNo.211、2021年)、労働安全衛生法66条の8、労働安全衛生規則52条の2・52条の3、厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」勤務間インターバル制度とは、厚生労働省「勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル」、国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」、厚生労働省「こころの耳」働く人の「こころの耳電話相談」。
※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。