休職から復帰する日が近づくと、ほっとする気持ちより先に不安が大きくなる。また同じように無理を重ねて、同じところで倒れるのではないか。そんな経験はないでしょうか。
その不安には理由があります。同じ職場に戻り、同じやり方で働けば、以前とまったく同じ状況が再現されるように思えるからです。ただ、国の職場復帰支援の手引きを読むと、休職前とまったく同じ働き方に戻ることまでは求めていないと分かります。ここを押さえておくだけでも、この先の不安との向き合い方は変わってきます。
まずは元の職場に戻るのが基本。変えるのは、主に働き方
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、まずは元の職場への復帰を原則としています。新しい環境に慣れるだけでも時間や心の負担がかかり、その負担が症状の再燃・再発につながりかねない、というのが手引きの説明です。
ただし、これはあくまで原則です。異動がきっかけで体調を崩した場合や、元の職場の環境・同僚が大きく変わっている場合は、配置転換や異動も選択肢として検討すべきだと手引きは述べています。
そのうえで手引きが勧めているのは、働き方の見直しです。数か月にわたって休んでいた人に、休職前と同じ質、同じ量の仕事をいきなり期待することには無理がある。そう明記したうえで、労働時間の管理や仕事の任せ方、職場の環境そのものを見直したうえで、負荷を少しずつ引き上げていく配慮を、企業側の対策として挙げています。
まずは元のまま(原則)
- 戻る職場・部署
見直して戻す
- 仕事の質・量
- 働き方・進め方
燃え尽き症候群は、性格の弱さだけが原因で起きるのではありません。心理学者マスラックらの研究では、本人と職場のあいだの合っていない部分が、その人の性格よりも大きく関わっているという見方が示されています。
対人援助やサービスの仕事では、まじめに相手と深く関わろうとする姿勢そのものが燃え尽きにつながっていたとする久保真人の文献レビューもあります。真面目・責任感が強い人が無理をしてしまう理由にまとめた「すべき思考」のクセも、無理を重ねる背景として関わることがあります。
以前とまったく同じやり方に、まったく同じペースで戻ろうとする必要はありません。やり方とペースの両方を見直すことが、同じ消耗を防ぐ助けになります。
一気に戻らなくていい
勤務先に制度があれば、段階を踏んで戻ることも選択肢の一つです。手引きは、正式な職場復帰を決める前の準備として、次の3つの例を挙げています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 模擬出勤 | 通常の勤務時間と同じ時間帯に、デイケアなどで軽い作業やグループミーティングをこなしたり、図書館などで時間を過ごしたりする |
| 通勤訓練 | 自宅から職場の近くまで、いつもの経路で移動する |
| 試し出勤 | 正式な復帰前に、実際の職場へ一定期間、試験的に出勤する |
こうした制度は、会社の都合のためではなく、不安を和らげながら復帰の準備を進めやすくするためのものだと、手引きは明記しています。
復帰に向けた具体的な調整は、休業中の労働者自身が復帰の意思を伝えることから動き出します。会社から声がかかるのを待つだけのものではなく、まずは人事や産業医など、対応できる窓口に、段階を踏みたい意向も含めて相談してよいということです。復帰の可否そのものは、主治医の意見や産業医等の意見を踏まえて会社が判断します。
気持ちが整理できてから動こうとすると、なかなか動けない、と感じているなら、先に相談してみる方法もあります。相談すると、次に何を決めればいいかが見えてきて、気持ちが後から整理されてくることがあります。
同じ働き方に戻ることへの不安と、どう向き合うか
また同じことが起きるのではないか。この不安は、以前の働き方のままなら当然のものです。うまくいかなかったやり方をそのまま繰り返せば、同じ結果になりやすいのは、燃え尽きに限った話ではありません。
だからこそ、何が合っていなかったのかを具体的に考えることが役に立ちます。仕事の量が多すぎた。仕事の進め方を自分で決められなかった。評価のされ方に納得がいかなかった。大切にしたいことと、実際の仕事内容がずれていた。
気づかないうちに、仕事や周囲への関心そのものが薄れていたと感じるなら、燃え尽き症候群、気づきにくい変化のサインと早めの対応も参考になります。
そんな心当たりがあるなら、そのうちの一つだけでも言葉にしておくと、会社や主治医に希望を伝える材料になります。原因は人によって違うので、漠然と「また頑張ろう」と思うより、合わなかった点を先に見つけておくほうが役に立ちます。
職場に戻ったとき、周囲との向き合い方
休んでいるあいだ、あなたが担っていた仕事は、誰かが引き継いでくれていたかもしれません。誰がどう引き継いだかは、職場によって違います。復帰したあとに気まずさを感じることがあっても、それを自分の性格の問題として受け取る必要はありません。必要以上に負い目を感じて縮こまる必要もありません。仕事を引き受けてくれた人がいれば、その感謝は言葉にしつつ、以前と同じように全部を引き受け直そうとしないことです。
仕事の受け方を変えて戻ると決めたなら、そのことを早めに周囲へ伝えておく方法があります。伝え方に迷うなら、職場で自己主張できないときに、伝え方の例があります。
一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった状態が続き、日常生活に大きな支障が出ている場合は、うつ病の可能性があると国立精神・神経医療研究センターは説明しています。自己判断だけで様子を見続けず、次の診察を待たずに、早めに主治医に伝えてください。
止まってもいい。何度でも歩き出せば、その一歩が未来を変える。以前とまったく同じ自分に戻る必要はありません。変えるところは変えて、また少しずつ歩き出せば十分です。
※ 出典: 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」、日本労働研究雑誌2007年1月号 久保真人「バーンアウト(燃え尽き症候群)——ヒューマンサービス職のストレス」、Christina Maslach, Wilmar B. Schaufeli, Michael P. Leiter "Job Burnout"(Annual Review of Psychology, 2001)、国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」。
※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。