セルフケア・休み方

真面目・責任感が強い人が無理をしてしまう理由

真面目で責任感が強い人ほど、気づけば無理を重ねてしまいます。その理由は性格の欠陥ではなく「すべき思考」という考え方のクセにあります。厚生労働省の資料で確認した考え方をもとに、責任感を手放さずに無理を減らす、責任の分け方と伝え方をまとめました。

江原 和比己(産業カウンセラー/かずな総合研究所代表)

更新 読了目安 4分

この記事の要点

  • 無理をしてしまうのは性格の欠陥ではなく、責任感の強さが「すべき思考」という考え方のクセと結びついたときに起きる仕組み
  • 厚生労働省の「こころの耳」は、「〇〇すべき」という決めつけを「〇〇であればよい」に変えると、心に余裕が生まれると勧めている
  • 実際の作業は人に渡せる。基準を伝える・進み具合を確認するはできる範囲でよく、結果を引き受ける立場だけは渡しても変わらず自分に残る
  • 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続き、生活に支障が出ているなら、受診も選択肢に入れてよい

真面目に、責任感を持って仕事に取り組んでいる。それなのに、気づけば限界まで無理をしていた。頑張りすぎている自覚はあっても、自分では止め方が分からない——そんな経験はないでしょうか。

その理由は、性格に欠陥があるからではありません。責任感の強さが、ある考え方のクセと結びついたときに起きる仕組みです。

なぜ、無理を止められないのか

真面目さや責任感の強さは、本来は仕事を支える強みです。その強みまで、変える必要はありません。無理につながるのは、そこに「すべき思考」という考え方のクセが重なったときです。

厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」は、考え方のクセの一つとして「すべき思考」を挙げています。自分の基準でしか行動できず、うまくいかないと罪の意識を持ったり、相手に腹を立ててしまう考え方で、自分や他人を「〇〇すべき」と批判してしまうことがあるといいます。

責任感が強いと、基準も高くなりやすいものです。そこにこの考え方のクセが重なると、基準を下げることが「サボり」や「無責任」のように感じられ、限界まで頑張り続けることになります。

「引き受けたからには最後まで一人でやり切るべきだ」「弱音を吐くべきではない」。こうした考えに心当たりがあるなら、休むことも、頼ることも、自分で妨げているのかもしれません。

無理につながる考え方のクセ

すべき思考

自分の基準でしか行動できない考え方のクセ

基準が下がらない

基準を下げることがサボりや無責任に感じられる

限界まで無理をする

休むことも頼ることも自分で妨げてしまう

もちろん、業務量そのものが多い、人手が足りないといった、本人ではどうにもできない事情が重なっている場合もあります。そうした事情と、考え方のクセは、自分の中で分けて考えることが大切です。

手放せるのは作業、残るのは責任

この考え方のクセへの対処として、こころの耳は「〇〇すべき」という頭ごなしの決めつけを「〇〇であればよい」程度の言い方に変えることを勧めています。自分にも他人にも寛容になり、心に余裕が生まれるといいます。

この「であればよい」という考え方は、誰かに仕事を渡すときにも使えます。「全部を自分でやるべきだ」といういまのやり方がうまくいっていないなら、違うやり方を試す番です。

実際に手を動かす作業は、人に渡すことができます。渡したあとも、決めた基準を言葉にして伝えることと、途中で進み具合を確認することは、できる範囲でやればよいことです。最後の結果を自分が引き受けるという立場は、渡しても渡さなくても変わりません。全部を自分の手で行うことと、責任を持つことは、同じではないのです。

たとえば後輩に仕事を渡すとき、「任せた以上は口を出さない」と「結局は自分がやり直す」の両極端の間で迷ったことはないでしょうか。基準を先に言葉にして伝え、途中で進み具合を確認し、最後の結果は自分が引き受けると決めておけば、渡したあとも自分の役割は消えません。

気づいたら、まず何ができるか

ここまでの話を、全部一度に変える必要はありません。「〇〇すべき」を「〇〇であればよい」に変えることは、人に仕事を渡すときに限りません。弱音を吐くときにも、誰かを頼るときにも、同じように使えます。

次に何かを人に渡す機会があれば、まず試してみてください。気持ちの整理がついてから渡そうとすると、そのタイミングはなかなか来ません。先に小さく渡してみると、気持ちは後から自然に整ってくることがあります。

頑張りすぎている状態は、自分では気づきにくいものです。頑張りすぎているサインに気づくにまとめた3つの問いが判断材料になります。

休むことへの罪悪感が強いなら、有給休暇を罪悪感なく使うにはが参考になります。職場での伝え方に迷うなら、職場で自己主張できないときにまとめた型が使えます。

気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続き、日常生活に支障が出ている場合は、うつ病の可能性があると国立精神・神経医療研究センターは説明しています。自己判断だけで様子を見続けるより、医療機関やかかりつけの医師に相談するという選択肢もあります。

より詳しいセルフチェックの方法は、疲れの度合いを測るところから始めるセルフケアにまとめています。

責任感の強さは、手放す必要のない強みです。やり方を、全部を自分で抱えることから、基準を伝えて任せることへ、少しずつ変えていくだけで十分です。

※ 出典: 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」セルフケア探偵、国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」うつ病。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。

専門家に相談する

本記事の内容について、個別のご状況に応じたご相談を承ります。