「無理してない?」と聞かれて、うまく答えられなかったことはないでしょうか。本人には無理をしている自覚がなくても、まわりから見れば明らかに頑張りすぎている。このズレは、珍しいことではありません。
なぜ、本人ほど気づけないのか
頑張りすぎている状態が続くと、それは少しずつ「いつもの自分」になっていきます。比べる相手が、少し前の、もう頑張りすぎていたころの自分に変わっていくからです。
気づけないのは、注意が足りないからではありません。頑張りすぎた状態そのものを基準にしてしまう、そういう仕組みのせいです。長時間労働が続くと感覚が麻痺していく仕組みについては、「残業しても平気」という感覚が一番危ないで詳しくまとめています。
気づくための、3つの問い
自分の感覚だけでは判断がつきにくいときは、外からの問いが判断材料になります。産業ストレス研究の分野に、ドイツの社会学者ジーグリストが唱えた「努力-報酬不均衡モデル」という考え方があります。仕事にかけている努力と、そこから得られる報酬が見合っているかを測るモデルです。
このモデルには、仕事にどれだけのめり込んでいるかを測る6つの質問項目もあります。日本語版マニュアルをまとめた産業医科大学の堤明純氏によると、こののめり込みは仕事で認められたいという気持ちと関連しているといいます。6つのうち、日常のふとした場面で気づきやすい3つを紹介します。
| 問い | 気づきのポイント |
|---|---|
| 朝起きると、すぐに仕事の問題を考え始めていないか | 目覚めた瞬間から、仕事モードに入っていないか |
| まわりの人から、仕事のために自分を犠牲にしすぎていると言われたことがないか | 「無理してない?」と聞かれたときと、同じ感覚ではないか |
| 仕事のことが頭から離れず、寝床に入ってもそのことばかり考えていないか | 体を休める時間に、頭だけ働き続けていないか |
3つとも、当てはまるかどうかを厳密に採点する必要はありません。思い当たる場面が一つでも浮かんだなら、それが「無理してない?」と聞かれたときのズレの理由かもしれません。
サインに気づいたら、まずできること
気持ちの整理がついてから休もうとすると、そのタイミングが来ないことがあります。先に立ち止まってみるほうが、気持ちは後から自然に整ってくることがあります。今日の予定を一つだけ減らすくらいで構いません。
先ほどの3つの問い以外にも、自分の状態をもう少し具体的に確かめたいときは、厚生労働省の無料セルフチェックが使えます。測り方や、今ある時間でできる対処法の選び方は、疲れの度合いを測るところから始めるセルフケアにまとめています。
気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態、体の不調が続き、日常生活に支障が出ているなら、自己判断だけで様子を見続けるより、医療機関やかかりつけの医師に相談するという道もあります。
一人で抱え込まず、身近な人や信頼できる相手に話してみることも、状態に気づく助けになります。話しているうちに、自分でも気づいていなかった頑張りすぎに気づくことがあります。
※ 出典: 堤明純(産業医科大学産業医実務研修センター)「日本語版努力-報酬不均衡モデル職業性ストレス調査票使用マニュアル」(2007年)。
※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。