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メンタルヘルス不調を理由に不利益な扱いを受けたと感じたとき

メンタルヘルス不調を伝えた後に降格や評価低下、退職勧奨を受けたと感じたとき、法律の保護は状況によって異なります。解雇権濫用法理やストレスチェックの不利益取扱い禁止など、きっかけ別の保護を確認したうえで、「不当だと感じる」気持ちを記録や相談にどうつなげるかをまとめました。

江原 和比己(産業カウンセラー/かずな総合研究所代表)

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この記事の要点

  • メンタルヘルス不調を伝えた後の降格・評価低下・退職勧奨などは、状況によって法律の保護の有無が変わる
  • 解雇そのもの、ストレスチェックの面接指導の申し出、職場のパワーハラスメント相談など、きっかけごとに適用される保護が異なる
  • 「不当だと感じる」という感覚を、日時や発言内容の記録に変えておくと、次の判断がしやすくなる
  • 記録を続けるか相談するかは状況の深刻さに応じて選べる。厚生労働省の総合労働相談コーナーは無料で相談できる

メンタルヘルス不調を会社に伝えてから、評価が急に下がった。仕事を任されなくなった。遠回しに退職を勧められている。そう感じているなら、その受け止めが正しいのか、それとも自分の考えすぎなのか、一人で判断するのは簡単ではありません。

不利益な扱いにあたるかどうか、そしてどんな保護が働くかは、状況によって変わります。自分の状況を確認しておくと、この先の判断がしやすくなります。

「不利益な扱い」にあたるのはどんな場合か

不利益な扱いとひとことで言っても、その中身はさまざまです。

  • 降格や、これまで任されていた仕事を大きく減らされること
  • 特に理由が説明されないまま、評価が急に下がること
  • 契約の更新時期に、次はないと告げられること
  • 遠回しに退職を勧められること、または解雇されること

こうした対応のすべてが不利益な扱いにあたるわけではありません。業績悪化で人員配置を見直すときや、業務に支障が出ている人に配慮した配置転換のように、正当な理由がある場合もあります。

自分で見分ける手がかりになるのは、その対応が業務上の必要性に見合っているか、本人の意向が確認されているかどうかです。理由が説明されないまま一方的に進められる、あるいは説明された理由と実際の対応の重さが釣り合わない場合は、注意して見ておく価値があります。

法律の保護は、何がきっかけかで変わる

法律の保護は、何がきっかけで、どう扱われたかによって変わります。自分の状況がどれにあたるかを知っておくと、次に何を確認すべきかが見えてきます。

きっかけ・状況 適用されうる保護
解雇を争いたい 労働契約法16条。合理的な理由と社会通念上の相当性のない解雇は無効
ストレスチェックの面接指導を申し出た 労働安全衛生法66条の10。申し出を理由とした不利益な取扱いを禁止
職場のパワーハラスメントについて相談した 労働施策総合推進法30条の2。相談・調査協力を理由とした不利益な取扱いを禁止
診断や特性で働くうえの制限が長期にわたる 障害者雇用促進法35条。障害を理由とした待遇面の差別的取扱いを禁止
労災認定された病気で療養中 労働基準法19条。休業期間とその後30日間は解雇不可

労災認定されていない体調不良、いわゆる私傷病には労働基準法19条は使えませんが、解雇である以上、労働契約法16条の基準は理由を問わずすべての解雇に適用されます。契約の更新を拒まれることは、法律上は解雇そのものとは扱いが異なります。労働基準法19条の解雇制限にも例外があります。自分の状況がどれにあたるか迷うときは、このあとで紹介する厚生労働省の窓口でも確認できます。

ハラスメントについて相談した場合、法律上の不利益な取扱いには至らなくても、対応そのものでつらい思いをすることがあります。相談したのに二次被害を受けたと感じたとき(セカンドハラスメント)で扱っています。

「不当だと感じる」と、あとで使える記録の違い

「なんとなくおかしい」という感覚は、無視しなくていいものです。ただ、その感覚だけでは、会社に説明を求めるときにも、外部に相談するときにも、話が伝わりにくいことがあります。感覚を、あとで使える記録に変えておくことが助けになります。

記録しておきたいのは、次のようなことです。

  • いつ、どんな場面でのやり取りだったか
  • 誰が、何を言ったか、あるいはどんな対応をしたか
  • 評価の通知や業務内容の変更を伝えるメールなど、形に残るもの

口頭で伝えられたことも、その日のうちに日付と内容を書き留めておけば、あとから記憶だけに頼らずに済みます。記録を取る目的は、会社と争うための材料をそろえることだけではありません。自分の中で「気のせいかもしれない」という迷いを減らし、何が起きているのかをはっきりさせることにも役立ちます。

怒りや自己不信を、そのまま次の一歩に変えない

不利益な扱いを受けたと感じたとき、怒りだけでなく、自分を責める気持ちが同時に湧くことがあります。あのとき伝えなければよかった、自分の伝え方が悪かったのかもしれない。そう考えてしまうのは、真面目・責任感が強い人が無理をしてしまう理由で扱った「すべき思考」によるものかもしれません。

ただ、会社の対応が不適切だったとしても、あなたの選択が間違っていたわけではありません。原因を自分の中にだけ探し続けても、状況は変わりません。今できることは、起きていることを正確につかみ、次にどう動くかを決めることです。

怒りや不信感を無理に消そうとする必要もありません。その感情は、何かがおかしいと気づいた証拠でもあります。感情を抑え込むより、それをきっかけに次の具体的な行動に移していくことが、状況を前に進める力になります。

記録を続けるか、相談するかを判断する

次に何をするかは、状況がどれだけ深刻かによって変わります。

まだ一度きりの出来事で、様子を見てもよいと感じるなら、記録を取りながらしばらく様子を見続けるという選択もあります。ただし、契約の更新時期のように期限が迫っている場合は、様子を見ている間に機会そのものを失うことがあるため、早めに相談したほうが安全です。同じような扱いが繰り返される、あるいは仕事を続けられないほどの負担になっていると感じるなら、社内の相談窓口や人事の担当者に相談する段階です。

社内の窓口を使いにくい、あるいは会社の対応に納得できないときは、外部の窓口も選択肢になります。厚生労働省が設置する総合労働相談コーナーでは、解雇や配置転換、いじめ・嫌がらせなど幅広い労働問題を相談できます。予約は不要で、面談か電話で、無料のまま相談できます。相談内容のプライバシーにも配慮してもらえます。全国の労働基準監督署などに設置されています。

どの段階でも、一人で抱え込まずに済む選択肢があることを知っておくだけで、次の一歩は選びやすくなります。

※ 出典: 労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第16条、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第66条の10、厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第30条の2、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第2条・第35条、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第19条、厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。

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