働き方・キャリア

会議で意見が通らないとき — 発言がどこまで通ったかを3つに分ける

会議で発言はしているのに、以前のように意見が採られなくなったと感じることがあります。経営学の沈黙研究をもとに、意見が否定されたあとで「自分の意見には価値がない」という判断が生まれる場合があることを示し、発言がどこまで通ったかを3つに分けて、次にすることを変える方法をまとめました。

江原 和比己(産業カウンセラー/かずな総合研究所代表)

更新 読了目安 4分

この記事の要点

  • 「自分の意見には価値がない」という判断は、意見が否定されたあとで生まれる場合がある
  • 発言を控える背景には、批判される恐れとは別に「言っても改善されない」という受け止めがある
  • 上司が発言を望んでいても、望まれていないと本人が予測すれば黙ることがある
  • 「通らなかった」を、議題にならなかった・採られなかった・形が変わった の3つに分けると、次にすることが変わる

会議で意見を出した。相手はうなずいた。それなのに話はそのまま進み、決まったのは別の案だった。前はこうではなかった。そんな経験が重なっているなら、自分の言葉に意味があるのか分からなくなっても不思議ではありません。そのうえで、まず分けておきたいことがあります。

「自分の意見には価値がない」という判断は、否定されたあとで生まれることがある

経営学には、職場で発言を控える現象を扱う研究があります。神戸大学の辺見英貴は、沈黙が生じる背景の例として、孤立することへの恐れ、自分のイメージや評判、評価が悪くなることへの心配、そして上司に発言しても改善がなされないという動機を挙げています。

この3つは、もとになるものが違うように読めます。前の2つは、言ったらどうなるかという予想です。批判されるのが怖くて言葉を飲み込む場面は職場で自己主張できないときで扱っています。3つめは、実際に言ってみた結果です。

同じ論文では、上司に意見を否定された部下が、自分の発言には価値がないと判断してしまう可能性がある、という指摘が紹介されています。

意見に価値がないから通らなかった、とは限りません。通らなかったという出来事が先にあって、そこから価値がないという判断が生まれた、という場合もあります。

発言そのものについても、似たずれが起きることがあります。同じ論文では、上司が意見を主張してほしいと望んでいたとしても、職場や上司に対して発言することが望まれていないと本人が予測すれば、結果として黙ることがある、と述べられています。

だからこそ、通らなかったという結果と、ご自身への評価は切り離して考えてよいのです。

発言がどこまで通ったかを3つに分ける

「意見が通らなかった」とひとくくりに見えても、通り方には3通りあります。見分ける手がかりは、発言のあとに何が起きたかです。

意見が通らなかった

議題にならなかった

うなずきや相づちだけで、中身についてのやりとりがないまま次の話題に移った。

議題になったが採られなかった

中身についてやりとりがあったうえで、別の案が選ばれた。

採られたが形が変わった

決まった案に、自分の案が入っている。

冒頭で触れた「うなずいたのに話がそのまま進んだ」という場面は、1つめに当たります。同意されたのではなく、意見の中身が扱われていない状態です。

こうして分けるのは、どこまで通ったかによって次にすることが変わるからです。

どこまで通ったかで、次にすることが変わる

どこまで通ったか 次にすること
議題にならなかった 議事録に発言が残っているか見る。残っていなければ、次に同じ議題が出たときに最初に出す
議題になったが採られなかった 「何を満たせば選ばれましたか」と条件をたずねる
採られたが形が変わった 決まった案のどこがご自身の案なのかを確かめる

議題にならなかった場合は、まず議事録を見ます。発言が残っていなければ、その場では検討の材料として扱われていません。自分の意見が悪かったと悩む前に、そもそも扱われたかどうかを確かめます。次に同じ議題が出たときに最初に出せば、扱われる順番を変えられます。

議題になったうえで採られなかった場合は、たずねる中身を選べます。なぜ自分の案が選ばれなかったかを聞くと、返ってくるのは相手の判断の説明です。何を満たせば選ばれたかを聞くと、次の機会に使える具体的な条件が返ってくることがあります。

採られて形が変わった場合は、決まった案のどこにご自身の案が入っているかを見ます。ほかの案と組み合わされた形で残っているなら、それは通った部分です。

同じ発言のしかたを繰り返して結果が変わらないなら、変えるのは発言の強さではなく、どこまで通ったかに合わせた次の行動です。

こうして分けても、通らない回が続くことはあります。そこで会社に期待するのをやめると決めるのも、一つの選び方です。

役割や立場が変わった時期と重なっているなら、役職を外されたとき、何が変わって、何が変わっていないかで、会社が決めて変わったことと、ご自身に残っているものを分けて書く手順を扱っています。

何も期待しなくなったと感じているなら、会社に期待しなくなったのは、無関心になったからではないにその変化の仕組みをまとめています。意欲が落ちた状態が続いて仕事に身が入らないなら、仕事のやる気が出ないのは、怠けではないかもしれないに受診を考える目安があります。

どこまで通ったかを分ければ、一度通らなかったあとにも、次にすることが一つ見つかります。

※ 出典: 辺見英貴「職場における従業員の沈黙に関する理論的検討」(組織学会大会論文集 9巻1号)、2020年、2026年9月12日閲覧。沈黙が生じる背景の例は同論文13ページ、上司による意見の否定が部下の判断に与える影響は同14ページ(Saunders et al., 1992 による)、上司の期待と本人の予測のずれは同15ページによる。

※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。

専門家に相談する

本記事の内容について、個別のご状況に応じたご相談を承ります。